Title  古今和歌集 上 (元永本古今集)  」表紙  *空白  」表紙裏  *空白  」1オ  *空白  」1ウ  *空白  」2オ  *空白  」2ウ  *空白  」3オ  *空白  」3ウ  Title  古今和歌集巻第一  0000  (仮名序)  やまとうたはひとのこゝろを  たねとしてよろつのことのはと  そなれりけるよのなかにあ  るひとことわさしけきものな  れはこゝろにおもふことをみる  」4オ  ものき【くもの】につけて【いひい】  たせるなりはなになくうく  ひすみつにすむかはつのこゑ  をきけはいきとしいけるも  のいつれかは哥をよまさりけ  るちからをもいれすしてあめつ  ちをもうこかしめにみえぬお  」4ウ  にかみをもあはれとおもはせ  をとこをむなのなかをも  やはらけたけきものゝふの心  をもなくさむるは哥なり  けりこの哥あめつちひらけ  はし【まり】けるときより【あ】ま  のうき【はしの】したに【てめかみ】  」5オ  をとこかみとなりたまへるこ【と】  をいへる哥なりしかれともよに  つたはることはひさかたのあめ  にしてはしたてるひめにはし  まりしたてるひめはあめわか  みこのめなりせうとのかみの  かたちをかたに(に)うつりてかゝやくを  」5ウ  よめるえひすの哥なるへしこれ  らはもしのかすもさたまら  す哥のやうにもあらぬことゝ  もなりあらかねのつちにし  てはすさのをのみことより  そおこりけるちはやふる哥  はもしもさたまらすゝなを  」6オ  にしてことのこゝろわきかたかり  けらしひとのよとなりて  よりそすさのをのみよ  となりてそみそもしあま  りひともしにはよみける  すさのをのみことはあまてる  おほむ神のこのかみなり女  」6ウ  とすみたまはむとていつもの  くにゝみやつくりしたまふと  きにそのところにやいろのく  ものたつをみてよみたまへ  るなり やくもたついつもやへかき  」7オ つまこめにやへかきつくるそ のやへかきを  かくてそはなをめてとりを  うらやみかすみをあは  れみつゆをかなしふこゝろ(こと)  はおほくさま/\になりにけ  るとほきところもいてたつあし  」7ウ  のもとよりはしまりてとし  つきをわたりたかき山もふも  とのちりゐちよりなりて  あまくもたなひくまておゐ  のほれることくにこのうたも  かくのことくなるへしなには  」8オ  つの哥はみかとのおほむはし  めなりおほさゝきのみかとの  なにはつにてみこときこえ  けるときとう宮をたかひに  ゆつりてくらゐにつきたまは  てみとせになりにけれは王  」8ウ  任といふ人のいふかりおもひ  てよみてたてまつりける哥  なりこのはなはむめの花をい  ふなるへしあさかやまのこと  はゝうねめのたはふれより  よみてかつらきのおほきみを  」9オ  みちのくにゝつかはしたりけ  るにくにのつかさことおろ  そかなりとてまうけなと  したりけれとすさましか  りけれはさきのうねめな  りける女のかはらけとりて  よめるなりこれになむおほき  」9ウ  みこゝろとけにけるこのふたつ  の哥は哥のちゝはゝのやう  にてそてならふ人のはし  めにもしけるそも/\哥の  さまむつなりから哥もかくそ  あるへきこのむくさのひとつには  」10オ  そへ哥おほさゝきのみかとを  そへたてまつる哥 なにはつにさくやこのは な冬こもりいまはゝるへとさ くやこのはな  と云るなるへしふたつにはかそへ  」10ウ  うた さくはなにおもひつくみのあち きなさみにいたつきのいる もしらすて  と云るなるへしこれはたゝ  ことにいひてものにたとへなと  もせぬことなりこの哥いかに  」11オ  云るにか【あら】むこのこゝろえ【か】  たしいつゝにたゝ哥とてなむ  これにはかなふへき  みつにはなつらへ哥 きみに我朝のしものおきて いなはこひしきことにきえ やわたらむ  」11ウ  といへるなるへしこれはものに  もなすらへてそれかやう  になむあるとやうにいふなり  この哥よくかなへりともみ  えす たらちねのおやのかふこのまゆ【こ】 もりいふ【せ】くもあるか妹【にあ】  」12オ はすて【か】うやうなるやこ  これにかなふへからむ  四にはたとへ哥 わかこひはよむともつきし ありそ海のはまのまさこは よみつくすとも  といへるなるへしこれはよろつの  」12ウ  くさ木とりけたものにつけて  こゝろをみするなりこの哥におな  し様なれはすこしさまを  かへたるなるへし  」13オ すまの海人のしほ焼くけふ(り) かせをいたみおもはぬかたに たなひきにけり  この哥なとやかなふへからむ  いつゝにはたゝ事の哥 いつわりのなきよなりせは如何 (許人)のことの(葉)うれしから  」13ウ まし  といへるなるへしこれはことのとゝ  のほりたゝしきをいふなり  この哥のこゝろさらにかなはす  とめ哥とや云へからむ やまさくらあくまていろをみ つるかな花ちるへくも風ふかぬよ  」14オ に  むつにはいはゐ哥 このとのはむへもとみけりさ きくさのみつはよつはにとの つくりせり  といへることのたくひなるへし  これはよをほめてかみにつかは〔消1〕  ふるなりこの哥いはゐ哥とはみえ  」14ウ  すなむある 春日野にわかなつみつゝよろ つよをいはふ心は神そしる らむ  これらやすこしかなふへからむ  おほよそむつにわかれむこと  はえあるましきことになむい  」15オ  まのよのなかいろにつきひとの心  はなになりにけるよりあた  なる哥はかなきことのみいて  くれはいろこのみのいへにのみ  むもれきの人しれぬことゝな  りてまめなるところにはゝなす  ゝきほにいたすへきことにもあら  」15ウ  すなりにたりそのはしめをお  もへはかゝるへくなむあらぬい  にしへのよゝのみかとはるの花  のあしたあきのつきのよことに  候ひと/\をめしてことにつけて  哥をたてまつらしめたまふある  はゝなをそふとてたよりなき  」16オ  ところにまとひあるはつきを  おもふとてしるへなきやみにた  とれるこゝろをみたまひては  さかしきおろかなりとしろし  めしけむかしゝかるのみにあら  すさゝれいしにたとへつくは  」16ウ  やまにかけてきみをねかひ  よろこひみにすきたのしひ心  にあまりふしのけふりによ  そへてひとをこひまつむしの  ねにともをしのひたかさこす  みのえのまつもおいあひのやう  におほえをとこやまのむかしを  」17オ  おもひて(て)をみなへし(の)ひとゝき  をくねるにも哥をいひてそ  なくさめけろまたはるの朝  に花のちるをみあきのゆふく  れにこのはのおつるをきゝあ  るはとしことにかゝみのかけに  」17ウ  みゆるゆきとなみとをなけき  くさのつゆみつのあわとをみ  てわかみをおとろきあるは  きのふはさかえおこりて時を  うしなひよにわひしたし  かりしもうとくなりあるはま  つ山のなみをかけのなかのみつを  」18オ  くみ秋はきのしたはをなかめ  あかつきのしきのはねをかそ  へあるはくれたけのうきふし  を人にいひよしのかはをひ  きてよのなかをうらみきつる  にいまはふしのやまもけふ  」18ウ  りたゝすなりなからのはし  もつくるなりときく人は哥  にのみそ心をなくさめける  いにしへよりかくつたはれるう  ちにならの御時よりそひ  ろまりけるかの御よや哥  」19オ  のこゝろをしろしめしたりけ  むかのおほむ時におほき  みゝつのくらゐ柿本の人丸  なむ哥のひしりなりける  これはきみも人もみをあは  せたるといへるなるへし秋の  」19ウ  ゆふへたつたかはになかるゝ  もみちはみかとの御めにゝ  しきとみえはるのあした  よしのやまのさくらは人丸  かこゝろにくもとそおほえけ  るまた山部赤人と云ひとあり  けり哥にあやしうたへなりけり  」20オ  ひとまろはあかひとかゝみに  たゝむ事か(た)く赤人は人丸  かしもにたゝむことかたく  南ありける奈良の帝の御  哥 たつたかはもみちみたれて  」20ウ なかるめりわたらはにしきなか やたえ南      人麿 むめの花其ともみえす膝形 之天霧る雪のなへてふれ ゝは ほの/\とあかしのうらの朝霧に  」21オ しまかくれ行船をしそ思     赤人 はるのゝにすみれつみにとこし れれそ野をなつかしみ一夜 ねにける わかのうらにしほみちくれは かたをなみあしへをさしてた  」21ウ つなきわたる  この人々をおきてまたすくれた  るひともくれたけのよゝにきこ  えかたくいとのより/\にたえ  すなむありけるこれよりさ  き/\の哥をあはせてなむ  万葉集とはなつけられたりける  」22オ  こゝにいにしへのこゝろをも哥  のこゝろをもしれる人わつか  にひとりふたりなりこれかれ  えたるところえぬところた  かひになむあるかのとしよ  りこのかたとしはもゝとせにあ  」22ウ  まりよはとつきになむなり  にけるいまこのことをいふに  つかさくらゐたかきをは  かやすきやうなれはいれ  すそのほかちかきよにそ  の名きこえたるひとはいとすく  」23オ  なし僧正遍昭は哥のこゝろを  えたれともまことすくなし  たとへはゑにかけるをむな  を見ていたつらに心をうこ  かすことし あさみとりいとよりかけてし  」23ウ らつゆをたまにもぬくかはる のあおやき はちすはのにこりにしまぬこゝろ もてなにかはつゆをたまとあ さむく  嵯峨のにてむまよりおちてよ  める  」24オ なにめてゝをれるはかりそを みなへしわれおちにきと人に かたるな  在原業平そのこゝろあまりて  事あかすしほめる花の色  なくてにほゐのこれるかことし 月やあらぬはるやむかしのはる  」24ウ ならぬわかみひとつはもとの身 にして おほかたは月をもめてしこれ そこのつもれは人の老となる 物 ねぬる夜のゆめをはかなみまと ろめはいやはかなにもなりぬへき  」25オ かな  文室(屋)康秀はことはたくみにてそ  のさまみにおよはすいはゝあき人  のよきゝぬきたらむかことし ふくからにのへのくさきのしほ るれはむへ山かせをあらし といふらむ  」25ウ  ふかくくさの帝の御国忌に くさふかき霞のたにゝかけかく してるひのくれしけふ にやはあらぬ  宇治山の喜撰はことはかすかに  してはしめおはりたしかなら  すいはゝあきのつきをみる  」26オ  にあかつきのくもにあへるかこと  し わかいほは都の辰巳しかそ なくよをうちやまと人はいふ なり  よめる哥おほくきこえねはかれ  これをかよはしてよくしら  す  」26ウ  小野の小町はいにしへのそとほり  ひめのりうなりあはれなるや  うにてつよからすいはゝ  よき女のなやめるところあ  るかことしつよからぬはをむ  なのうたなれはなるへし おもひつゝぬれはや人のみえつ  」27オ らむゆめとしりせはさめさら ましを いろみえてうつろふものはよの なかの人のこゝろのはなにそ ありける わひぬれはよをうきくさのね をたえてさそふみつあらは  」27ウ いなむとそおもふ  そとほりひめの哥 れかせこかくへきよひなりさゝかに のくものふるまゐかねてし るしも  おほとものくろぬしはそのさま  いやしいはゝたきゝおへる山人  」28オ  の花のかけにやすめるかことし おもひいてゝこひしきときは はつかりのなきわたるとも人 のしらなむ かゝみ山いさたちよりてみて ゆかむとしへぬるみはおいや しぬると  」28ウ  このほかのひと/\そのなきこ  ゆるのへにおふるかつらのはゐ  ひろこりはやしにしけき  このはのことしおほけれと哥  とのみおもひてそのさまし  らぬなるへしかゝるにいますめ  らきのあめのしたをしろしめ  」29オ  すときよつのつゝきこゝのつの  かへりになむなりぬるあまね  きおほむらつくしみのなみ  やしまのほかまてなかれ  ひろき御めくみのかけつくは  やまのふもとよりもしけく  」29ウ  おはしましてよろつのまつり  ことをきこしめすいとまもろ/\  のことをすてたまはぬあま  りにいにしへのことをもわ  すれしふりにしことをも  おこしいてたまふとていま  」30オ  はみそなはしのちのよも  つたはれとて延喜五年四月  十八日紀友則御書所領紀貫之  前甲斐さう官かうちの躬【恒】  左衛門府生に忠岑等におほせ  られて万葉集にいらぬ哥と  」30ウ  もふるきみつからのをもたて  まつらせたまへそれかなかに  も梅をかさすよりはしめてほと  ゝきすをきゝもみちをゝり  ゆきをみるにいたるまてまた  鶴かめにつけてきみをおもひ人  をいはゐあきはきなつくさ【を】  」31オ  みてつまをこひあふさかにいた  りてたむけをいのりはる  なつあきふゆにもいらぬく  さ/\の哥南えらせ給ける  すへて哥千首廿巻なつけ  て古今和哥集と云かくこのた  ひあつめえらはれて山した  」31ウ  みつのたえすはまのまさこのお  ほくつもりぬれはいまは明日  かはの瀬になるうらみもき  こえすさゝれいしのははほと  なるよろこひのみそあるへき  はるのはなにほ(ひ)すくなくして  」32オ  むなしきなのみしてあきのよ  なかきをかこてれはかつは  ひとのみゝにおそりかつは  哥のこゝろにはちおもへとも  たなひくゝものたちゐなく  しかのおきふしはつらゆき  かこのよにおなしくむまれて  」32ウ  このことのときにあへるをなむ  よろこひぬる人丸なくなりに  たれと哥のとゝまれるかなた  とひときうつりことさりたの  しひかなしひゆきかふとも  この哥のもし(あるをや)あをやきのいと  」33オ  のたえすまつのはのちりうせす  してまさきのかつらなかく  つ(た)はりとりのあとひさしう  とゝまりなは哥のさまをし  りことの心をえたらむひとは  おほそらのつきをみるかこ  とくにいにしへをあふきて  」33ウ  いまをこひさらめかも  」34オ  *空白  」34ウ  Title  古今和歌集巻第一  Subtitle  春哥上  0001  ふるとしに春の立ける日           在原元方 としのうちにはるはきにけり  」35オ ひとゝせをこそとやいはむこと しとやいはむ  0002  はるたちける日よめる           紀貫之 そてひちてむすひしみつのこ ほれるをはるたつけふのかせや とくらむ  」35ウ  0003  不知題           読人不知 はるかすみたゝるやいつこみよ しのゝ吉野山にゆきはふり つゝ  0004  はるのはしめに           二条后宮御哥  」36オ ゆきのうちにはるはきにけ りうくひすのこほれるな みたいまやとくらむ  0005  不知題           読人不知 むめかえにきゐるうくひすは るかけてなけともいまたゆき  」36ウ はふりつゝ  0006  雪の樹にふりかゝれるを           素性法師 はるたては花とやみらむ しらゆきのかゝれるえたに うくひすのなく  0007  不知題           よみひとしらす  」37オ こゝろさしふかくしそめてをり けれはきえあへぬゆきのはな とみゆらむ  或人のいはくこの哥前お  ほいまふちきみのなり  0008  二条きさきの東宮のみや  すところとまうしける時に正  」36ウ  月三日御前にめしておほ  せことあるあひたにひは  てりなからゆきのかしら  にかゝりけるをよませた  まうける           文室(屋)康秀 はるのひのひかりにあたる花 なれとかしらのゆきとなる  」37オ そ【わひしき】  0009  雪の【ふ】りける日           貫之 かすみたちこのめもはるの ゆきふれはゝなゝきさと もはなそちりける  」37ウ  0010  はるのはしめに           ふちはらのことなを はるやときはなやおそきときゝ わかむうくひすたにもなか すもあるかな  0011  はるのはしめの哥           壬生忠岑 はる【き】ぬと【人は】いへともうくひす  」38オ のなかぬかきりはあらしと そおもふ  0012  寛平御時后宮の哥合哥           源まさすみ やまかせにとくるこほりのひま ことにうちいつるなみやは るのはつ花  」38ウ  0013        紀友則 はなのかをかせのたよりにたく へてそうくひすさそふしるへ にはやる        千里 うくひすのたによりいつるこゑなく はゝるくることをいかてし らまし  」39オ  0015        在原棟梁 はるたてと花もにほはぬやま さとはものうかるねにうくひ すそなく  0016  不知題        読人しらす のへちかくいへゐをすれはうく  」39ウ ひすのなくなるこゑを朝な /\聞  0017 かすかのはけふはなやきそわか くさのつまもこもれりわれも こもれり  0018 かすかのゝとふひのゝもりいてゝみ よいまいくかありてわかなつ  」40オ みてむ  0019 みやまにはまつのゆきたにき えなくにみやこはのへに わかなつみけり  0020        貫之 あつさゆみおしてはるさめけ ふゝりぬあすさへふらはわか なつみてむ  」40ウ  0021  仁和帝のみこにおはしまし  けるときにひとにわかな  たまひける哥 きみかためはるのゝにいてゝわか なつむわかころもてにゆきは ふりつゝ  0022  哥たてまつれとおほせありけ  」41オ  る時に        つらゆき かすかのゝわかなつみにやしろた へのそてふりはへて人のゆく らむ  0023  不知題        在原行平  」41ウ はるのきる霞のころもぬきを うすみやまかせにこそたゝる へらなれ  0024  寛平御時后宮哥合に        源宗于 ときはなるまつのみとりもはるく く〔衍字1〕れはいまひとしほのいろま さりけり  」42オ  0025  哥たてまつれとおほせら  れしときたてまつれる        貫之 わかせこかころもはるさめふる ことにのへのみとりそいろま さりける  0026 あをやきのいとよりかくるはる  」42ウ 霜そみたれてはなはほころ ひにける  0027  西大寺の柳をよめる        僧正遍照 あさみとりいとよりかけてしらつ ゆをたまにもぬけるはるの あをやき  」43オ  0028  不知題        読人しらす もゝちとりなくなるはるはも のことにあらたまれともわれそ ふり行  0029 をちこちのたつきもしらぬやま なかにおほつかなくもよふこ とりかな  」43ウ  0030  かりのこゑをきゝてこしへま  かりにける人をおもひいてゝ  よめる        躬恒 はるくれはかりかへるなりし らくものみちゆきふりにこ とやつてまし  0031  かへるかりを        いせ  」44オ はるかすみたつをみ(す)てゝ行かりは 花なきさとにすみやならへ る  0032  たいしらす        よみひとしらす をりつれはそてさへにほへむめ のはなありとやこゝにうくひ すのなく  0033 いろよりもかこそあはれにおもほ  」44ウ ゆれたかぬきかけしやとのむめ そも  0034 やとちかくむめの花うゑしあちき なくまつひとのかとあやまたれけ り  0035 むめの花たちよるはかりありし より人のとかむるかにそし みぬる  0036  むめのほなをりてよめる  」45オ        東三条右大臣 うくひすのかさにぬふてふむめ のはなをりてかさゝむおいかく るやと  0037  不知題        よみひとしらす よそにのみあはれとそみしむめ のはなあかぬいろかはをりて なりけり  0038  むぬのはなをゝりて人にお  」45ウ  くるとてよめる        とものり きみならてたれにかみせむゝめの はないろをもかをもしる人 そしる  0039  くらふやまにて        つらゆき むめの花にほふはるへはくらふ山 やみにこゆれとしるくそありける  」46オ  0040  月夜に梅花をゝりて(と)人のい  ひけるに        躬恒 つきよにはそれともみえすむ めのはなかをたつねてそをるへかり ける  0041  はるの夜梅花を はるのよのやみはあやなしむめの花い ろこそみえねかやはかくるゝ  」46ウ  0042  はつせにまうつることにれいや  とりけるひとの家にひさし  うやとらてほとへてまかり  たるにかくさたかになむや  とはあるとあるしいひい  たしたれはそこなるむめを  ゝりて        貫之 ひとはいさこゝろもしらすふるさと は花そむかしのかにゝほひける  」47オ  0043  水のほとりにむめの花のさ  けるをよめる        いせ はることになかるゝみつを花と みてをられぬみつにそてそぬ れける  0044 としをへてはなのかゝみとなる みつはちりかゝるをやくもると  」47ウ いふ【ら】む  0045  家に侍りける梅花のちり  けるを        つらゆき くるとあくとめかれぬものをむ めのはないつの人まにうつろひ にけむ  0046  寛平御時に后宮の哥合に        読人しらす  」48オ むめか香をそてにうつしてと めたらは春はすくともか(た)み ならまし  0047        素性法師 ちるとみてあるへきものをむめ のはなうたてにほゐのそてにと まれる  0048  題不知        読人しらす ちりぬともかをたにのこせむめの花  」48ウ こひしきときのおもひてにせむ  0049  人の家に侍りける桜のさきは  しめたりけるを見て        貫之 ことしよりはるしりそむるさくら はなちるてふことはならはさらな む  0050  たいしらす        よみひとしらす さとゝほみひともすさめぬさくら花  」49オ いたくなわひそわれみはやさむ  やまたかみ人もすさめぬとも  0051 やまさくらわかみにくれは春 霞みねにもをにもたちかく しつゝ  0052  染殿の后の御前にかめに  させる桜花を見て  」49ウ        前お(ほ)いまふちきみ としふれはよはひはおいぬし かはあれと花をしみれは ものおもひもなし  0053  なきさの院にて桜花をみ  て        業平 よのなかにたえてさくらのさかさら は春のこゝろはのとけからまし  」50オ  0055  山桜を みてのみやひとにかたらむ也まさく く〔ら〕てことにをりていへつとにせ む  0054  題不知 いしはしるたきなくもかなさくら はなをりてもてこむみぬひと のため  0056  はなのさかりに京をみやりて  」50ウ        素性 みわたせは柳桜をこきませて みやこそはるのにしきな りける  0057  さくらの花のもとにてとしの  おいぬることをなけきて        友則 いろもかも<おなしむかし       にさくらめとゝ>しふる人<そあらた                    まりける>  」51オ  0058  をれるさくらを たれしかもとめてをり鶴はるか すみたちかくすらむやまのさ くらを  0059  哥たてまつれとおほせられし  とき読てたてまつれる さくらはなさきにけらしなあし ひきの山のかゐよりみゆるしら  」51ウ くも  寛平の御時后宮の哥合せに        友則 みよしのゝよしのゝやまのさくら 花ゆきかとのみそあやまたれける  0061  三月うるふつきありける時によ  める        いせ さくらはなはるくはゝれるときたに も人のこゝろにあかれやはせぬ  」52オ  0062  さくらのはなのさかりにひさし  うとはとは〔衍字2〕さりける人のき  たりけるに        よみ人しらす あたなりと名にこそたてれさくら はなとしにまれなる人もまちけり  0063  かへし        業平朝臣 けふこすはあすはゆきとそふりな ましきえすはありと花とみましや  」52ウ  0064  不知題        同人 ちりぬれはこふれはくるしなきもの を今日こそ桜をらはをりてめ  0065 をりとらはをしけにもあるかさくら はないさやとかりてちるまてはみむ  0066        紀有友 さくらいろにころもはふかくそめてきよ〔消1〕 むはなのちりなむのち(の)かたみに  0067  さくらの花みにきたりける人につかは  」53オ  しける        みつね わかやとの花みかてらにくるひとはちり なむのちそこひしかるへき  0068  亭子院の哥合に        いせ みるひともなきおく山のさくらはな ほかのちりなむのちそさかまし  なきやまさとのとも  」53ウ  *空白  」54オ  Title  古今和歌集巻第二  Subtitle  春下  0069  題不知        読人不知 はるかすみたなひくやまのさくら花 うつろはむとやいろかはり行  0070        素性 まてとい【ふ】にちらてしとまるものな  」54ウ らはなにをさくらにおもひまさまし  0071 のこりなくちるそめてたきさくら花 あきて世中はてのうけれは  0072 このさとにたひねしぬへしさくらはな ちるとまかふにいへちわすれて  0073 うつせみのよにもにたるかさくらはな さくとみるまにかつちりにけり  0074  僧正遍照によみておくりける  」55オ        惟喬親王 さくらはなちらはちらなむちら すとてふるさと人のきてもみなくに  0075  雲林院の桜ちりけるをみて        承均法師 さくらちる花のところは春なから 雪そふりつゝきえかてにする  0076  さくらの花のちりけるをよめる  」55ウ        素性法師 はなちらすかせのやとりはたれか しるわれにをしへよゆきてうらみ む  0077  雲林院の桜花をよみける        承均法師 いさゝくらわれもちり南ひとさかり あろなは人にうきめみえなむ  」56オ  0078  あひしれりけるひとのまうてき  てのちに花にさしてつかは  しける        つらゆき ひとひみしきみもやくるとさくら はなけふはまちみてちらはちら南  0079  山のさくらを        深養父 はるかすみなにかくすらむさくら はなちるまをたにもみるへきものを  」56ウ  0080  心地そこなひてわつらひける時風に  あたらしとておろしこめてのみ  侍りけるあひたにさける花のちり  かたになりにけるをみてよみ  はへりける        典侍因香 たれこめてはるのゆくへもしらぬまに まち(し)さくらもうつろひにけり  XXXX  さくらのはなの水にちるをみて        貫之  」57オ ゆくみつに風のふきいるゝさくら花 きえすなかるゝ雪かとそみる  0081  東宮の雅院にてさくらの花  のちりてみかは水になかれ  けるをみてよめる        菅野高世 えたよりもあ(た)にちりにし花なれ はおちても水のあはとこそなれ  」57ウ  0082  さくらのとくちるをよめる        貫之 ことならはさかすやはあらぬ桜 花みるにわれさへしつ心なし  0083  さくらのことくとくちる物はな  しと人のいひけれは さくら花とくちりぬともおもほえ す人のこゝろそ風もふきあへぬ  」58オ  さくらのはなのちるをよめる        躬恒 ゆきとのみふるたにあるをさくらはな いかにちれとか風のふくらむ  0084        友則 ひさかたのひかりのとけき春の日にし つこゝろなく花のちるらむ  0085  春宮の帯刀の陣にてさくらの  花のちるをよめる        藤原好風  」58ウ はる風は花のあたりをよきて吹 け心つからやうつろふとみむ  0087  ひえにのほりて花を見侍り  て読る         貫之 やまたかみゝつゝ我こしさくら花か せはこゝろにまかすへらなり  0088  仁和御時中将の御息所の家哥合  によめる        大伴黒主  」59オ はるさめのふるはなみたかさくら 花ちるをゝしまぬ人しなけれは  0089  亭子院哥合        つらゆき さくら花ちりぬる風のなこりには みつなきそらになみそたちける  0090        奈良の帝御哥 ふるさとゝなりにしならのみやこに もいろはかはらて花はさきけり  」59ウ  0091  春哥とてよめる        良岑宗貞 はるのいろはかすみにこめてみせ すとも香をたにぬすめ春山風  0092  寛平御時后宮哥合に        素性法師 はなの木も今はほりうゑし春た てはうつろふいろに人ならひけり  0093  題不知        よみひとしらす  」60オ はるのいろのいたりいたらぬさとはあ らしさけるさかさる花のみゆらむ  0094        貫之 みわ山をしかもかくす(か)はる霞人に しられぬ花やさくらむ  0085  雲林院親王のともに花みに北山に  の辺に罷けるによめる        素性法師  」60ウ いさけふはゝるの山へにまとひ南くれ なはなけの花のかけかは  0096  春の哥とて読る        素性 いつまてかのへにこゝろのあくかれむ はなしちらすは千世もへぬへし  0097  題しらす        読人しらす はることに花のさかりはありなめとあひ(み)む   は ことのいのちのみなり  」61オ  0099 ふくかせにあつらへつくるものならはこの ひとえたはよけといはまし  0098 はることのよのつねならはすくしてし むかしはまたもかへりきなまし  0100 まつひともこぬものゆゑにうくひすのな きつるはなをゝりてけるかな  0101  寛平御時哥合に        興風 さくはなはちくさなからにあたなれと たれかは春をうらみはて(た)る  」61ウ はるかすみいろのちくさにみえつる はたなひく山の花のかけかも  0103        在原元方 かすみたつはるのやまへはとほけれとふ きくるかせはゝなのかそする  XXXX 月かけも花もひとつにみゆる夜は 大虚(おおそら)をさへをらむとそする 貫之  0104  うつろふはなをみて        みつね  」62オ はなみれは心さへにそうつりけるい ろにはにてし人もこそしれ  0105  題しらす        よみひとしらす うくひすのなくのへことにきてみれ はうつろふはなに風そふきける  0106 ふく風をなきてうらみようくひす はねれやはゝなに手たにふれたる  0107        菅根朝臣 ちるはなのなくにしとまるものならはわれ  」62ウ うくひすにおとらましや(は)  0108  仁和御時中将みやすところのいへの哥合  せむとしける時よめる        藤原後陰 はなのちることやわひしきはるかすみ たつたの山のうくひすのこゑ  0109  鶯のなくを        素性 こつたへはおのかはかせにちる花を たれにおほせてうくひすのなく          こゝらなくらむとも  」63オ  0110  うくひすのきになくを        みつね しるしなきねをもなくかなうくひす のことしのみちるはなゝらなくに  0111  題しらす        よみひとしらす こまなめていさみにゆかむふるさとは ゆきとのみこそ花はちるらめ  0112  此哥或人のいはく前太政大臣のとなむ    を      む ちる花になきてうらみよよのなかに 我身もともにあらむものかは  0113        小野小町  」63ウ 花の色はうつりにけりないたつら(に)我身 よにふるなかめせしまに  0114  仁和御時中将の御息所の家に哥  合せむとしけるときに        素性 をしとおもふこゝろもいとによられなむ ちる花ことにぬきてとゝめむ  0115  しかのやまこえに女のおほくあ  へりけるにつかはしける        つらゆき  」64オ あつさゆみはるのやまへをこえくれは みちもさりあへす花そちりける  0116  寛平御時哥合の哥        貫之 はるのゝにわかなつまむとこしわれは ちりかふ花にみちはまかひぬ  0117  山寺にまうてたりける夜読る やとりしてはるの山辺にねたるよは 夢のうちにも花そちりける  」64ウ  0118  寛平御時后宮哥合 ふくかせと谷の水としなかりせは御山 かくれの花を見ましや  0119  志賀よりかへりける女ともの華山  にいりてふちの花のもとにた  ちよりてかへりけるに読ておく  りける        遍照 よそにみてかへらむ人にふちのはなはゐ まつはれよえたはをるとも  」65オ  0120  家に藤花のさきたるを人のた  ちよりてみけれは        躬恒 わかやとにさけるふちなみたちかへりす きかてにのみ人のみるらむ  0121  題しらす        よみひとしらす 今も鴨さきにほふらむたちはなのこし まのくまのやまふきの花  0122 春早雨に(に)ほへるいろもあかなくに香  」65ウ さへなつかしやまふきの花  0123 やまふきはあやになさきそ花みむと うゑけむきみかこよひこなくに  0124  よしのかはのほとりに山振のさ  けりけるを        つらゆき よしのかはきしのやまふきふくかせ にそこのいろさへうつろひにけり  0125  題しらす        よみひとしらす かはつなくゐてのやまふきちりにけりあ はましものを花のさかりに  」66オ  此哥或人のいはくきよともかとそ  0126  春哥とて読る        素性法師 おもふとちはるの山へにうちむれてそこ ともしらぬたひねしてしか  おもふてふことをかれいひにつゝみもて  0127  はるのとくす(く)ることをよめる        躬恒 あつさゆみはるたちしよりとしつきの いるかことくもおもほゆるかな  」66ウ  0128  やよひに鶯のこゑのひさしうせさ  りけれは        つらゆき なきとむるはなしなけれはうくひす もいまはものうくなりぬへらなり  0129  やよひのつこもりかたにやまを  こえけるにやまかはに花のな  かれけるに        ふかやふ はなのちるみつのまに/\とめくれは 山には春もなくなりにけり  」67オ  0130  はるをゝしみてよめる        もとかた            z をしめともと(と)まらぬなくにはる かすみかへるみちにしたちぬと思へは  0131  寛平御時后宮哥合        興風 こゑたゝすなけやうくひすひとゝせに ふたゝひとたにくへき春かは  0132  やよひのつこもりに花つみにかへ  」67ウ  りてるをむなに        躬恒 とゝむへきものとはなしにはかな くもちる花ことにたくふ心か  0133  やよひのつこもりの日雨のふりける  に藤花をりて人につかはす  とて        業平 ぬれつゝそしゐてをりつるとしの内に はるは今日をしかきりと思は  0134  亭子院の哥合にはるのはて  」68オ        みつね けふのみとはるをおもはぬ時谷 もたつことやすき花のかけかは  」68ウ  *空白  」69オ  古今和哥集巻第三  夏哥  0135  題不知        読人不知 わかやとのいけのふちなみさきにけ り山ほとゝきすいつかきなかむ  この哥或人のいはく柿下人丸かなり  0136  四月にさけるさくらを  」69ウ        きのとしさた あはれてふことをあまたにやらし とや春におくれてひとりさくらむ  0137  題不知        読人しらす 五月待山ほとゝきすうちはふきいま もな〔か〕なむこそのふるこゑ  0138        いせ さつきこはなきもふりなむほとゝき すまたしき時のこゑをきかはや  」70オ        よみひとしらす さつきまつはなたちはなのかをかけは むかしの人のそてのかそする  0140 いつのまにさつきゝぬらむあしひきの山ほ とゝきすいまそなくなる  0141 けさきなくいまたゝひなるほとゝきす はなたちはなにやとはからなむ  0142  おとはやまをこえける時ほとゝきす  のなくをきゝて  」70ウ        紀友則 おとは山今朝こえくれはほとゝきす こすゑはるかにいまそなくなる  0143  郭公のはしめてなきけるをきゝ  て        素性法師 ほとゝきすはつこゑきけはあちきなく ぬしさたまらぬこひせらるはた  0144  寧楽のいそのかみの寺にてほと  ときすのなくをきゝて  」71オ いそのかみふるきみやこのほとゝきす こゑ許こそ昔なりけれ  0145  題しらす        読人しらす さみたれになくほとゝきすこゝろあらは ものおもふわれにこゑなきかせそ  0146 ほとゝきすなくこゑきけはわかれにし ふるさとさへそこひしかりける  0147 ほとゝきすなかなくさとのあまたあれは なを(う)とまれめおもふものから  」71ウ  0148 おもひ(い)つるときはの山のほとゝきすか らくれなゐのふりてゝそなく  0149 声はしてなみたはみえぬほとゝきす わかころもてのひつをからなむ  0150 あしひきの山ほとゝきすをりはへてた れかまさるとねをのみそなく  0151 いまさらに山にかへるなほとゝきすこゑ のかきりはわかやとになけ  0152        三国町  」72オ やよや侍て山ほとゝきすことつてむわ(れ) よのなかにすみわひぬとよ  0153  寛平御時の后宮の哥合に 五月雨に鬼思居は霍公よふかくなき ていつち行藍  0154 よやくらき道やまとへるほとゝきす わかやとをしもすきかてになく  0155        大江千里  」72ウ やとりせし花橘もかれなくになと ほとゝきすこゑたえぬらむ  0156        きの貫之 なつのよのふすかとすれはほとゝきすなく ひとこゑにあくるしのゝめ        壬生忠岑 くるゝかとみれはあけぬるなつのよを あかすとやなく山ほとゝきす  0158        きのあきみね なつ山にこひしき人やいりぬらむこゑふ  」73オ *衍字 ふりたてゝなくほとゝきす  0159        よみひとしらす こその夏なきふるしてしほとゝきす それかあらぬかこゑのかはらぬ  0160  ほとゝきすのなくをきゝて        つらゆき さみたれのそらもとゝろにほとゝきす なにをうしとか夜たゝなくらむ  0161  さふらゐにさけたうへけるついて  にをのこともをめしてほ(と)ゝきす  」73ウ  まつ哥読とおほせられ(け)る時に        みつね ほとゝきすこゑもきこえすやまひこはほ かになくねをこたへやはせぬ  0162  やまほとゝきすのなくをきゝて        つらゆき ほとゝきす人待山になくなれはわれ うちつけにこひまさるなり  0163  はやうすみけるところにほとゝきす  のなきけるをきゝて        たゝみね  」74オ むかしへや今も恋しきほとゝきすふ るさとにのみなきてきつらむ  0164  ほとゝきすのなきけるをきゝて        躬恒 ほとゝきすわれとはなしにうの花のうき よのなかになきわたるらむ  0165  はちすの露をみて        遍照 はちすはのにこりにしまぬこゝろもてな とかはつゆをたまとあさむく  」74ウ  0166  つきおもしろかりけるあかつきに        ふかやふ なつのよはまたよひなからあけぬるを くものいつこに月やとるらむ  0167  となりよりとこなつの花をこ  ひにおこせたりけるをやらて        みつね ちりをたにすゑしとそおもふさきし よりいもとわかぬるとこなつのはな  0168  六月つこもりによめる        同人  」75オ なつと秋とゆきかふそらのかよゐ ちにかたへすゝしき風やふくらむ  」75ウ  *空白  」76オ